首里の旧暦歳時記|王家が始めた清明祭から鬼餅の伝説まで

更新日: 2026-07-21

沖縄で暮らしはじめた人がまず驚くのが、カレンダーがふたつあることだと言われます。新聞にもテレビの天気予報にも旧暦が併記され、スーパーには旧暦行事のお供えコーナーが当たり前に並ぶ——祖先とつきあう行事の多くが、今も旧暦で動いているからです。

かつて琉球王国の都だった首里は、その旧暦文化の発信地でした。一年の流れを追いながら、旅行者が首里で出会えるポイントを紹介します。

旧暦1月16日|十六日祭(ジュウルクニチー)——あの世のお正月

生きている人の正月が終わったころ、旧暦1月16日は**「あの世の正月」**。ご先祖があの世で正月を迎える日とされ、お墓に親族が集まって手を合わせます。特に前年に身内を亡くした家では大切に営まれる行事です。

旧暦3月|清明祭(シーミー)——王家が玉陵で始めた「お墓のピクニック」

沖縄の春の風物詩が清明祭(シーミー)。門中(むんちゅう=父系の一族)の墓に親族が集まり、重箱料理を供えたあと、墓の前でみんなで食べる——初めて見る人には「お墓でピクニック?」と驚かれる、祖先と一緒に過ごす明るい行事です。

このシーミー、ルーツはまさに首里にあります。中国から伝わった清明の儀礼を、1768年、時の国王が玉陵で祖先を祀る行事として定めたのが始まりとされ、王家から士族へ、やがて庶民へと広がりました。新暦4月ごろ、沖縄本島中南部の墓地がにぎわう風景の源流は、あの世界遺産の陵墓なのです。

旧暦7月13〜15日|旧盆——エイサーが響く三日間

ウンケー(お迎え)・ナカビ(中日)・**ウークイ(お送り)**の三日間、ご先祖がこの世に帰ってきます。地域によっては旧盆にエイサーの道じゅねー(練り歩き)が響き、沖縄の夏がいちばん濃くなる時期。新暦では8月末〜9月ごろにあたります。

旧暦8月15日|十五夜——獅子が舞う晩

中秋の名月は、沖縄では魔を払う獅子の晩。首里では汀良町と末吉町に伝わるふたつの獅子舞が舞い、月見のお供えにはフチャギ(小豆をまぶした餅)が並びます。首里城公園の「中秋の宴」など年間行事ともつながる、首里がいちばん旧暦らしくなる晩です。

冬至|トゥンジー——ジューシーの湯気

冬至は沖縄の言葉でトゥンジー。この日はトゥンジージューシー(炊き込みご飯)を炊いて仏壇に供え、家族で食べる習わしがあります。「冬至にジューシー」は今もスーパーの惣菜コーナーが証明してくれる、生きた行事食文化です。

旧暦12月8日|ムーチー——首里金城の鬼退治伝説

月桃(サンニン)の葉に餅を包んで蒸した**ムーチー(鬼餅)**を供えて、子どもの健康を祈る冬の行事。この由来譚の舞台が、首里金城町だと伝えられています。

伝説はこうです。首里金城に住む兄が悪さをする鬼になってしまい、困った妹が鉄釘入りの餅を鬼に食べさせ、退治した——。鬼を葬った場所と伝えられるのが、金城町石畳道の途中にある内金城嶽、あの大アカギの茂る御嶽です。ムーチーの日に石畳道を歩けば、月桃の香りの向こうに鬼の伝説が透けて見えます。

ちなみに月桃の葉で包む菓子は、首里の老舗山城まんじゅうでも一年中出会えます。

旅行者のための旧暦ガイド

ふたつのカレンダーを持つ島の、祈りの濃い一年。旅の日付を旧暦に変換してみるところから、首里の時間は始まります。

※本記事は沖縄県公文書館等の公開情報をもとにまとめたものです。行事の内容・時期は地域・家庭により異なります(情報確認日:2026年7月21日)。

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